業務プロセスを変えよう! 介護とITシステムとサービス生産性向上
介護ロボットの導入・運用講座
もし、あなたが事業所の責任者の場合、数百万円もかけてITシステムを導入したのに、現場から「時間短縮の実感があまりない」なんて言われたら、困りますよね。導入したシステムの操作に慣れ、使いこなせるようになれば効果が出始めるのではないかと期待されるかもしれません。
残念なことにITシステムの導入効果についても、パレートの法則(80:20の法則)従うことが多く、あるITシステムにおける20%に該当する主要機能を効果的に使用しているでのあれば、そのITシステムを使用することで得られる効果の80%は既に得られていると考えられます。つまり残りの80%の機能を使いこなしても、劇的な時間短縮は期待できないという事になります。
では、どうしたら良いのか。生産性を向上したいのであれば、業務プロセスを変更してください。これはどのような業界でも共通しているのですが、業務プロセスの変更が生産性の向上の唯一の方法で、ITシステムは業務プロセスを変えるための手段です。
一般企業でのあるある
統合基幹業務システム(ERP)はご存知でしょうか?一般企業に導入されることが多い、「会計業務」「人事業務」「生産業務」「物流業務」「販売業務」などの基幹業務を一元化し、効率化をあげるためのITシステムです。このITシステム導入時の失敗事例として、「導入後仕事が忙しくなった」「以前の方が楽だった」「投資に対して期待した効果得られなかった」という話をよく聞きます。
導入に失敗した企業の多くが、業務プロセスを変更せずに、従前の業務プロセスに合わせてITシステムの方を変更しています。つまり、ITシステムを導入する前と後で仕事のやり方を変えなかったために、生産性の向上を実現できなかったのです。
道具の進化と生産性の向上
何故、業務プロセスの変更が必要なのか、「道具の進化と生産性の向上」の視点で考えたいと思います。
道具が機械に、機械がITシステムに変化するとともに生産性は飛躍的に向上しました。しかし、ツールとしての道具・機械・ITシステムだけでは生産性は大きく変わらないことを歴史が証明しています。
第一次産業の一つ農業を例にあげます。太古の時代、人類は動物と同じように食料を採取することで生活を行っていましたが、道具が発明されたことで、食料を育てる農業という「業務プロセス」変更が行われました。
これにより、食料の生産性が飛躍的にのび文明社会がスタートしました。
もし、この「業務プロセス」の変更がなく、ただ道具を使って食料を採取するだけであれば、チンパンジーと大差はありません。そして、農業による食料生産の効率化もなく、文明社会は生まれなかったでしょう。
人類史上における次の大きな変化は18世紀後半から19世紀にかけて起こった産業革命です。機械が発明されたことで、工場で大量生産するという「業務プロセス」変更が行われました。
もし、この「業務プロセス」の変更がなく、ただ機械を使うだけならば、第二次産業もなく、現在の近代文明は無かったでしょう。
そして現代、ITシステムが発明されました。最も恩恵を被るのは、第三次産業です。ITシステムを使って「業務プロセス」の変更が行われれば、劇的なサービス生産性の向上が期待できます。
介護現場の場合は….
視点を介護現場に移しましょう。
介護現場における道具とは、車椅子や介護ベッドが当てはまります。また、機械については移乗支援機器や、入浴支援機器が該当します。これらは、導入するだけで生産性は向上しますが、介護は第一次産業でも、第二次産業でも無いので、生産性の向上幅はそれほど大きくはありません。
ITシステムは、見守りシステムや、介護記録システムが該当します。これらは、導入するだけでは生産性は向上しませんが、合わせて業務プロセスを見直すと、大きく生産性が向上します。介護の現場に限りませんが、ITシステムを導入するのであれば、合わせて業務プロセスの変更をご検討ください。