見守りシステム運用講座 -導入偏-
介護ロボットの導入・運用講座
運用ルールが決められていない事が介護ロボット導入に失敗する大きな原因の一つであると言われています。しかし、どのように運用ルールを決めて行けば悩んでいる方もおられると思いますので、運用ルールの作り方やポイントについて解説致します。
3つのルール
見守りシステムを上手く運用していくためには、次の3つのルールを決めることが必要です。
- 見守り対象者に対するルール
- 見守りシステムの機材に関するルール
- 介護職員に対するルール
この3つの項目をルールを検討し易い別の表現で表すといかのようになります。この項目について順番に運用ルールを検討していきます。
- 誰に、いつ、どのように使うのか
- 端末の管理方法を決める
- 動作検知時の対処方法を決める
誰に、いつ、どのように使うのか
何を導入しても最初はそれなりに使っていたのに、いつの間にか使わなくなって埃を被っているという経験はありませんか?日々の仕事にはある日何かが変わる変化点が必ず発生します。運用ルールがないとこの変化点を境に使用されなくなってしまいます。
例えば、見守りシステムの場合、導入時には今まさに転倒リスクを抱えた対象者がおられて、その方の転倒事故を防ぎたいという明確な動機があることが多いです。しかし、対象者の身体状態の変化や退去などの理由により、不必要になる変化点が発生したときに、次の対象者のかたの部屋に見守りシステムを付け替えるプロセスが必要となります。
しかし、運用ルールがないと、このプロセスが機能せず必要のなくなった部屋に見守りシステムが取り残され、見守りシステムの無い部屋で転倒事故が発生してしまう事が少なからずあります。
選定基準を作りましょう
変化点を乗り越えてシステムを活用していくためには、「選定基準」を設けることが有用です。「選定基準」は対象者の健康状態・身体能力から、必要とされる介護機器や、その介護機器の使い方を導き出す手法です。まずは、この「選定基準」を設けることをお薦めします。
「選定基準」別のコラムで詳しく説明を行っていますので、そちらをご覧ください。
端末の管理方法を決める
ITシステムを導入した際に端末を紛失したり、壊したり、そういった事を不安に感じる方おられませんか。紛失や故障といった事は管理方法を決めることでかなり削減する事ができます。端末については次の4項目を決めましょう。
- 誰がいつ端末を携帯する
- 端末の携帯方法
- 交代時の端末の受け渡し方
- 充電方法
1.誰がいつ端末を携帯する
誰が使うのか?これは介護業界に限らず、どの業界のどのようなシステムにおいても、導入後に活用がすすまない原因の大きなパーセンテージを占めます。人間は基本的に変化を嫌いますので、ルールが無いと使おうとしません。一部の新しいもの好きの人が使用して、飽きたら使わなくなります。これを避けるために、誰がいつ端末を携帯するのかをまず決める必要があります。
2.端末の携帯方法
医療現場や介護現場における端末の故障のほとんどが、落下と水没です。そして、この落下と水没が発生する現場と発生しない現場の違いは、携帯方法が決まっているか、決まっていないかです。ストラップでたすき掛けにするのか、ポーチに入れて腰に結わえるのか、誰が携帯した場合であっても、同じ方法で携帯するようにすると落下や水没による故障を防ぐことができます。
3.交代時の端末の受け渡し方
頻繁に端末の紛失が発生して困ったりしていませんか?個人の携帯と職場において共用で利用される端末において、共用で利用される端末の紛失が多いのはなぜか?それは、共用で利用される端末は、担当者間で端末の受け渡しがあるからです。交代時の受け渡しのルールが決まっていない現場では頻繁に端末の紛失が発生します。
いつ、どこで、どのように端末の受け渡しを行うのか決めるだけで、紛失は大きく改善できます。
4.充電方法
端末の充電池にはリチウムイオン電池が使用されていますが、リチウムイオン電池は約300回充電を行うと、電池容量が7割程度に減少します。500回充電を行うと、半分程度になると言われています。適当に充電を繰り返すと、本体よりも先に電池が使えなくなってしまいます。できるだけ、長く使っていくためには充電方法を決めることも大事です。
動作検知時の対処の方法を決める
どのような業種でも同じですが、新しい仕組みを取り入れたときに起こる職員に纏わる2つの問題があります。一つは兎に角、理由を付けて使おうとしない人が出る。もう一つは負担が偏る問題です。
対処と行動を決める・対処のグルーピング
使わない人がでないようにする方法は、使うことが前提の仕事のプロセスを構築することです。個人の好きと嫌いに関係なく、新しいシステムありきの業務プロセスを作ってしまうのが大事です。見守りシステムの場合は、端末を持たせることと、それぞれの動作検知が発生したときにとる、対処・行動を決める。この2点を決めて実行することが重要です。
端末の携帯方法については既に説明いたしましたので、動作検知が発生したときにとる、対処・行動について説明します。例えば「起き上がり」を検知通知を受け取ったときと、「転倒」の検知通知を受け取ったときは、スタッフが取るべき行動が変わります。よって、どの検知が発生した場合は、どういった行動を取るのか決めましょう。
一つ注意点があります。ネオスケアの場合は全部で10種類の検知項目があります。この全ての検知項目に対して、個別の対処・行動を決めると覚えるのが大変です。そこで、検知項目をいくつかのグループに分け、グループ毎に対処・行動を決める事ををお薦めします。例えば、複数ある検知項目の中から直ぐに対応が必要な検知項目、急ぐ必要の無い検知項目に分けます。例えば、複数ある検知項目の中から直ぐに対応が必要な検知項目、急ぐ必要の無い検知項目に分けます。直ぐに対応が必要な検知項目について、アラートが鳴った場合はどうする。急ぐ必要の無い検知項目のアラートが鳴った場合はどうするというふうにルールを決めましょう。
グルーピングを行ったときに、そのグループ別に検知音を変えるのもお薦めの方法です。
検知音の活用については、別のコラムで紹介を行っていますので、そちらをご覧ください。
業務負荷の偏りの回避
端末を携帯して、検知動作を受け取れるようになると、情報のインプットが多くなります。インプットが増えると比例してアウトプットが増えていまいます。そのため、端末を持つ人と持たない人で仕事量が差が出てきます。つまり、端末の台数が全員分無い場合、端末を持つ人に負荷がかたより易くなります。そのため、特定の人に仕事が偏らないようなルールも考える必要があります。
例えば、インカムを活用して、端末を持つ人がその他の人に指示を飛ばすような方法も効果があります。
最後に
今回は介護ロボットの導入時の運用ルール作成のポイントについて解説いたしました。本テーマはYoutubeにも動画をアップしていますので、ぜひご視聴ください。